犬の問題行動
「散歩をすれば犬の問題行動は解決する」室内飼育、小型犬にも必要なエクササイズ
土足文化のアメリカでは、動物を室内で飼育することに抵抗感が低く、室内飼育が主流になっています。そのため、人と同じ空間で過ごす犬に対してしつけの必要性は日本よりもずっと高く、ペットストアやシェルターで安価にしつけ教室が開催されていることもあり、しつけ教室に飼い犬を通わせる飼い主さんが非常に多くなっています。
犬のしつけに関して諸外国では「Tired dog is Happy dog(=運動で疲れている犬は幸せな犬だ)」というのが通説で、犬の散歩量やアクティビティは犬の問題行動を左右すると認識されています。
ですので、日本国内で見られるような「外で1日中鎖で繋いで飼っている」「小型犬に散歩は不要」「犬をアクセサリー感覚で着飾る」「バッグに入れて外出」といった飼育法はアメリカでは犬としての本質や生態を無視していると非難されることもしばしばあります。
日本では、土佐犬、秋田犬、ドーベルマンといった大型犬(パワフルブリード)は檻に入れて飼育する決まりを設けている自治体がありますが、アメリカでは、運動量の多いこれらの犬種こそエネルギーを消耗させるために自由に動ける敷地面積や時間が必要であるとし、檻の中での飼育は問題視されています。(州によって指定犬種に違いはあります)
そのためシェルターやレスキューグループ、良識のあるブリーダーさんでは、譲渡希望者と犬の運動量がつり合わない場合は、犬を手に入れることができません。また、アメリカ内では、外飼育や鎖に繋いでの飼育、ゲージや犬小屋などの限られたスペースでの飼育は違法または動物虐待と見なされ、警察やアニマルコントロールから警告を受け、改善が見られない場合は罰金や奉仕活動への参加、ひどい場合には裁判沙汰にまで進展することがあります。
この法律の背景には、アメリカは狂犬病の発生国であることもあり、なるべく犬がアライグマなどの狂犬病を保持する野生動物と触れ合う機会や、人を噛む機会、噛まれる機会を減らすためとも言われています。
TNR(地域猫)
野良猫を避妊/去勢して地域で管理する地域猫活動
ここで言う地域猫とは、野良猫にレスキューが避妊や去勢、予防接種を行なって地域に返し、その後もレスキューや地域住民の管理の元で生活する猫のことです。
私の住む街ではずっとTNR活動は法的に認められていませんでしたが、2009年にTNR活動が法的に認められ、現在は市の支援を受けて活動しています。市営シェルターでは定期的にクリニックをTNRで保護された猫の不妊手術のために安価で開放しています。法律でTNRをした猫には耳カット(不妊手術済みのマーク)と狂犬病の注射を接種することが義務付けられています。
地域猫の活動は地元住民の方々の協力が不可欠です。キャットレスキューは野良猫捕獲のためのトラップ(罠)を仕掛ける許可や地域猫に対する理解を得るために、何度も住人のもとへ足を運び、協力を仰ぎます。また、猫嫌いの住人と猫好きの住人とのトラブルの仲裁に入り、折衷案を提案し、和解に努める活動もしています。猫が好きな人もそうでない人も目的は「野良猫を減らしたい」と言う同じ目的にフォーカスしていることに気付いてもらうこと、糞尿やゴミ荒らし、鳴き声などのトラブルが解決されること、野良猫がTNRにより1代限りで増えないようになることを理解してもらうように努めます。
そして捕獲した猫の中に人懐れした性格の猫や仔猫がいた場合は、レスキューで譲渡へと回されます。
TNR活動は不妊手術した野良猫を元の場所に戻しておしまいではありません。その後も地域の衛生や安全が保たれているか、野良猫の数や生態を通じて管理する必要があるのです。そのため地域猫や手術の終わっていない猫の数を常に把握し、定期的な給餌や負傷した野良猫の手当て、排泄物の掃除なども活動内容に含まれているのです。
これは一例ですが約300匹の野良猫がいる地域で8年がかりでTNR活動を実施したところ、不妊手術率は96%、野良猫の数も100匹まで減りました。それでも猫がいると猫を捨てる人や動物虐待の数が増えてきてしまうので、TNRにはリリース後も給餌や猫の頭数や健康管理、清掃など継続的な活動やアフターケアは欠かせません。
アメリカでも動物虐待は猟奇犯罪の入口になると言うケースが多く、野良猫を管理することが地域衛生や安全性を高めるとして、次第にTNRの活動が受け入れらています。またTNR活動を介して子供たちの博愛精神の育成や、地域住人同士のコミュニケーションにも一役かっているようです。
【注意】このテキストは2010年9月の情報です。告知なく変更や訂正をする事があります。また、文中アメリカと表現していますが対象はメリーランド州に限定しています。アメリカの動物に対する取り組みや考え方は州法や自治体、生活形態により違いがあるため、内容が全米に共通している訳ではありません。